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ウィッグとはいわゆるカツラのことです。日本では今までカツラというと薄毛を隠すためのものだと考えられてきました。しかし、近年ではウィッグと呼ばれるようになり、薄毛だけでなく、ファッションの一部として使われるようになってきました。

今ではファッションのアイテムとしてメジャーになったウィッグですが、どのような理由でウィッグが生まれ、どのように使われてきたのでしょうか。ウィッグの歴史をみてみましょう。

世界でのウィッグの歴史をたどってみよう

ウィッグのはじまりはとっても古い!古代エジプトのミイラでも発見される

ウィッグがいつから使われるようになったのかということは、明確にはわかっていません。古いものでは、古代エジプトのミイラが出土した時にミイラがウィッグをかぶっていたのです。

古代エジプトでは衛生上の観点から、頭髪を剃る習慣があり、強い日差しから頭皮を守るためにウィッグをかぶっていたと考えられています。また、染色してあったこともあり宗教上の観点においてウィッグを使用していたと考えられています。

ところが、出土したミイラを観察してみると、髪の毛が残っており、長いミイラもいたのです。髪の毛の質は縮れ毛でした。
しかし、古代エジプト人がかぶっていたウィッグはストレートのウィッグもありました。このようなことから推測すると、古代エジプト人の毛は縮れていたこともあり、ストレートのウィッグを、実用性や宗教だけでなくファッション目的でかぶっていたとも考えられるのです。

日本では醍醐天皇(900年前後)の時代にウィッグを使用していたという記録が残っています。このころのウィッグは主に女性用のウィッグで、貴族を中心に使用されていました。「髪は女の命」と言われるのは古代からの流れなのですね。

文献だけで見ていくと、古事記にウィッグの記述があるために、神代の頃から日本ではウィッグが使われていたのではないかと推測されています。
この時のウィッグはつるくさで作られており、魔除けの意味があったと言われています。

エジプトを見ても日本を見ても、ウィッグは神聖的なものと結びつきがあります。日本でも「髪」と「神」が同じ発音であることからも、髪が神聖なものと結びつけられていたということが推測できます。
もともとは宗教的儀式や、限られた人のみ使用できたウィッグがいつの間にかファッションとして一般の人たちの間で流行りだしたというのが、ウィッグの始まりでもあるでしょう。

当時は下のイメージのような頭部の装飾が施されていたのでしょうか。

歴史が古いウィッグ

17世紀初めのヨーロッパでおしゃれと衛生面で使われはじめたウィッグ

ヨーロッパでウィッグが一般的に使われるようになったのが17世紀の初めか中頃です。髪が薄くなってきた男性が、薄毛を気にして使い始めたというのがきっかけです。現代と同じく薄毛は男性の悩みだったようです。

また、当時のヨーロッパでは髪の毛を洗う習慣がありませんでした。このころのヨーロッパ人は毛じらみに悪戦苦闘していたのです。自髪を短くしてしまい、ウィッグをかぶると、ウィッグに毛じらみが湧いたとしても、毛じらみの駆除も比較的簡単になります。衛生面においてもウィッグが広まっていったのです。

最初の頃はフランスのルイ13世が薄毛でウィッグを使い始めたのがきっかけです。それが宮廷に仕える周りのものたちにも広がっていきます。その後、ルイ14世の時代になるとウィッグは一般的に定着していくのです。

フランスはヨーロッパの文化の中心となっていましたので、公式な場ではウィッグを着用するという、フランスの文化が他国にも広まっていったのです。

このころのウィッグの素材は人毛でしたが、人毛は今と同様高価なものでしたので、馬やヤギの毛で作られたウィッグもありました。そして髪粉というものも使われていました。

ウィッグは、前髪やサイドは自髪を用いてボリュームのないところにウィッグを着用するという、ポイントウィッグに簡略化していきます。

当時はもちろん優れたカラーリング能力もありませんでしたので、ウィッグと自髪の色の違いがわかってしまうことや、加齢による白髪が悩みどころだったのです。

そこで、自髪とウィッグの色をごまかすために髪粉が使われていました。スターチや小麦粉が使用されていたようです。

化粧室をパウダールームと呼ぶのは、化粧のパウダーからではなく、この髪粉に由来するとされています。

ヨーロッパでのウィッグ着用のイメージとして一般的に想像されるのが、下の写真のような髪型ですね。

昔のウィッグのイメージ

18世紀前半にかけて女性のおしゃれとして盛りスタイルのウィッグも流行

18世紀前半にかけ、ウィッグは女性中心に使用されるようになります。女性のおしゃれへの欲望はこのころから盛んになります。当時のヘアスタイルの中でも注目を浴びたのが、ルイ14世の寵妃、マリー・アンジェリク・ド・フォンタンジュが流行らせたヘアスタイルです。髪の毛を上へ、上へと盛り上げるフォンタンジュが流行します。

フォンタンジュ嬢が王様と馬でお出かけの途中、強い風で、結いあげたヘアスタイルが崩れてしまいました。ヘアスタイルを直すために、大急ぎで髪を高くまとめてリボンを結んだところ、意外にも好評だったため、フォンタンジュ嬢もこのヘアスタイルがお気に入りとなり、宮廷中の貴婦人たちを中心に流行り始めたのです。

それが、一般の人たちにも流行り始め、皆こぞって上へ上へと高く結いあげたのです。中にはリボンや宝石で飾り立てる人もおり、高くそびえ立つ程になったとか。

このフォンタンジュはあまりにも華美だということもあり、いささか滑稽なヘアスタイルだと揶揄されることもあり、流行は廃れていくことになります。

フランス革命後はアメリカでも薄毛で使用されるようになったウィッグ

フランス革命をきっかけにウィッグは質素になりました。完全に使われなくなったわけではなく、女性の間では入れ毛やつけ髪が流行します。男性ではウィッグはほとんど使用されなくなりました。一方アメリカでは薄毛用のウィッグが使用され始めます。薄毛用のウィッグはヨーロッパでも輸入される様になりました。

日本でのウィッグの歴史

民衆に広まった江戸時代のウィッグ

日本においても江戸時代ごろから一般民衆にウィッグが広まってきました。もともとは歌舞伎でウィッグが使われていました。歌舞伎のウィッグは土台が銅板だったためヘルメットのような感覚だったのではないでしょうか。一般の人においては、かつらタイプのウィッグはなかったようです。

男性の髪型を考えていただくとわかるでしょう。私たちが「ちょんまげ」と呼んでいるあの髪型は「さかやき」と呼ばれる成人男性の髪型で、頭頂部は剃っていました。

もともとは、武士が戦場へいくのに兜をかぶると、中に入れた髪で蒸れてしまうのを防ぐため、髪を剃ったと言われています。

武士が薄毛などの理由で髷が結えないとなると、「入れ毛」という増毛方法がとられていました。他人の毛を足して髷を結ったのです。

女性の場合は「かもじ」と言われるものを結った髪の中に入れ、ボリュームアップをしていたのです。「かもじ」のような手法は今でも美容室などで使われています。

江戸時代からこのような美容方法が使われていたとは、日本人の美意識は昔から高かったことがわかります。人毛の売買も盛んに行われていたようです。昔から、毛は悩み事の一つだったということがわかります。

明治維新後に日本に入りはじめた西洋ウィッグ

明治維新後、日本にも西洋ウィッグが入り始めます。最初の頃はつけ毛などで使われていました。ウィッグとしての本格的な流行は大正時代に入ってからで、芸能人などによってウィッグが広まり、一般的となりました。しかし、昭和の初め頃には戦争の影響でウィッグは下火になります。男性の薄毛用のウィッグは昭和の初期に使用されるようになり、西洋のウィッグがアレンジされるようになりました。

ファイバーも開発された戦後のウィッグ

戦後には再び西洋のウィッグが流行ります。アメリカでウィッグがファッションとして使用されるようになり、それが日本に入ってきたのです。そしてファイバーの髪が開発されました。日本でもファイバーの研究開発がなされ、ウィッグに活用されていきます。

ウィッグは男性の薄毛用の用途が中心でしたが、その男性用ウィッグのノウハウを取り入れて、女性のファッションウィッグも質の良いものとなっていきます。粗悪品の改善やアフターケアが充実するにつれ、様々なファッションのアイテムとして活用されるようになるのです。

さらに近年では食生活の乱れや、女性の社会進出、高齢化、ストレスの増加、さらに医薬品の副作用により、女性の薄毛も問題視されるようになり、女性においても薄毛の用途でウィッグが広まります。さらに医療用のウィッグも出始めました。

また、ウィッグの用途も、ただのファッションのみの利用だけでなく、日本独特のコスプレ文化にも利用され、さらにウィッグが広まるようになり、カラーのバリエーション、髪型のバリエーションまでもが豊富になってきました。

1990年代を過ぎると、男性の間でも、化粧を施すなど、美意識が高まり、薄毛隠しとしてではなく、ファッションとしてウィッグを活用するようになってきました。

ファッション用へと多様性を見出したファイバーの品質の進歩

ファッションとしての用途が広まったウィッグですが、そうなると、少しでも美しく、より人毛に近づけるよう自然に、またお手入れが楽なようにと望むようになります。そんな希望を叶えるようファイバーは日々進化を遂げてきました。

改良が進む以前のファイバーには、特有の不自然なテカリがあり、妙に髪の太さも揃っているものがありました。近年では人毛のように、わざと太さを不揃いにしたり、テカリを軽減した自然な艶感を表現した高品質なファイバーへと発展してきました。

ファイバー表面をコーティングする技法を研究することで、櫛通りも良く、表面をデコボコに加工することにより、マットな質感に仕上げることができ、不自然な光沢を減らすことも実現できるようになっています。

カラーにおいても自然感を出すために、単色ではなく数色のカラーを組み合わせ一つのウィッグを作る工夫がなされたものもあります。

さらにファイバーの難点であった、熱に耐性がないというデメリットも、耐熱加工することで対応しています。

このような技術の進歩から、ファイバ−100%のウィッグであっても、人毛と見分けがつきにくいものも出てきているのです。美への飽くなき探求がウィッグをここまで進化させたのでしょう。

国内産耐熱ファイバー

まとめ

このように、もともとは宗教的、神聖的なものから始まったウィッグでしたが、神聖的なものを一般市民が真似るようになり、ファッションとして世の中に広まり始めました。その時代時代で、ウィッグは権力の象徴であったり、美の象徴であったりしたのです。

現代ではファッション的な要素が多くなりましたが、いつの時代も髪に対するこだわりは強いものです。これからもウィッグは時代とともにさまざまな変化を遂げていくのではないでしょうか。

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